2017年2月10日刊行
北陸中日新聞
【記事全文】
トランポノミクスへの対処 浜本学泰
二〇一七年の世界経済の動向は、トランプ米大統領が鍵となるのは間違いない。株式市場や
為替市場はそれらをいまだ適正に評価できずにいる。この不透明な環境下においては、
ポジティブ要因とネガティブ要因を書き出し、影響を精査しておくことが肝要だ。
トランプ大統領の政策のうちポジティブ要因は、大幅な減税と規制緩和策にある。
これらが現実化してくれば米国経済は活気を取り戻すだろう。市場はこれをすでに織り込み、
株価は上昇、長期金利も上昇している。米国内の景気拡大傾向はより確かなものになる可能性が
高い。一方、ネガティブ要因は強硬な保護貿易政策にある。トヨタ自動車のメキシコ工場建設を
牽制したり、日本や欧州の通貨安政策を批判していることからも、米国の貿易赤字の縮小に強い
こだわりを見せている。このトランポノミクスの政策はよくレーガノミクスと比較されるが、
同様の政策を取ってくるならば、日本や中国に通貨切り上げを迫る可能性もあると考える。
最も不透明なのは日本の輸出産業の影響だ。米国の環太平洋連携協定(TPP)離脱により、
輸出品に高関税をかけられるリスクが高まった。自動車、建機など、北米売上比率の高い企業の
業績懸念が出てくる。北陸にも米市場への輸出を行っている企業が多く存在するが、
関税や為替に関して注意が必要であると考える。企業や個人はどう対応していくべきだろうか。
企業においては「米国リスクを軽減させておくこと」が業績のためには必要であろう。
他の市場にテコ入れしたり、米国以外の分野で業績を伸ばす努力をするべきである。
個人においては、投資という観点では、米国の景気回復の恩恵を取りに行くか、より確かな
金などへの投資を増やしていくべきだろう。投資は先の見通しにくい長期投資よりも、
より先が見えやすい短期投資の優位性が高まるだろう。
はまもと・たかやす 1973年、石川県小松市生まれ。一橋大商学部卒。野村証券、
メリルリンチ日本証券、独立系投資顧問会社などを経て2008年、個人投資家に。1
5年、金沢市に投資スクール「アーニングアカデミー金沢本校」を設立。